「仕入れが止まった日」――アジアン雑貨店で学んだ”生き残る商売のコツ”
【1】仕入れが止まった日――タイの洪水でお店の命綱が絶たれる
今から12年位前、私は、ある県のショッピングモールにあるアジアン雑貨店で働かせてもらう事になった。
そのアジアン雑貨店は、田舎のショッピングモール内で、異彩を放っていた。雑貨もあるが、洋服を沢山扱っているお店だった。商品のディスプレイも手が込んでいて、お店が機能している。試行錯誤し、商品を売りたい気持ちが店から伝わってきた。他のお店も回ってはみたが、どのお店も働く気にはなれなかった。
ここで働きたい。
面接をお願いして、ありがたいことに採用して貰った。結婚してから、色んな理由で不採用(子どもできたらやめるんでしょ?ご主人の異動があったらやめちゃうよね?等)だった私を、このお店のオーナーは雇ってくれた。今まで面接に落ちまくっていた私は救われた、と思った。捨てる神あれば、拾う神ありだ。
ご主人の異動があるまでは、うちで面倒をみてあげる、お店を変えて欲しい、
とオーナーは言った。
タイからオーナーが直輸入していた激安アジアン衣料は、粗利が大きかった。
又、ここでしか売っていないのでよく売れた。
田舎だから、ライバルがいないのである。一人勝ちだった。
しかしある日突然、そのタイの仕入れルートが絶たれる。
原因は、大雨。
テレビでもニュースになった大規模な洪水。
オーナー「タイが大変な事になっているらしい!」
と電話をかけてきた。↑駄洒落じゃないよ。
帰宅後、TVをつけるとタイの道路が川と化した現地映像が流れていた。
アパレル工場は稼働停止。中には再開もできず、そのまま廃業となったところもあった。
【2】「何でもいいから仕入れて!」東京の問屋街へ、緊急買い付け
仕入れた商品がタイから届かない。売る服がない。お客さんはいっぱい来る。
土日に間に合わない。売り逃したらデカい。
「何か置けば売れるから!」というオーナー(確かになんでも売れていた)。
急遽オーナーと私は、問屋巡りにGO!行き先は、東京の問屋街。
現在は無きichiokuの問屋を回った。
【3】問屋でのひと悶着。「これじゃ売れない」と言い放った若かりし私
あちこち色んな問屋を回った。
オーナーはよく似た商品ばかり仕入れる。
その為、私はいつも横でオーナーが仕入れた物をメモしていた。
こういう服が欲しい、というリストもスタッフから預かっていた。
オーナーは人が良くて、仕入れ先が売れ残って困っている商品があると聞くと、買ってあげる!と余計な物まで仕入れていた。
私は行く先々で問屋さんに質問をぶつけた。
「なんでこんな形の襟なんですか?古臭い、、スタンドカラーとか別の形が売れるのに。」「なんでここに英語のロゴ、入ってるんですか?無い方がいいのに。」
「なんで、、、」「なんで、、、」と私が問屋先の人に質問を繰り返すので、ついにオーナーの堪忍袋が切れた。
「ちょっと!さっきから何なの?お店の方に失礼でしょ。一緒に回りたくない!」と怒られた。
「いや、ホントの事言ってるだけですよ。あれじゃ売れないから。問屋さんに勧められても買えないです。お金の無駄ですよ。」
問屋の隅っこで口論。
結局、問屋先の方が、「いやいや、はっきり言って下さった方が参考になるので、、言ってください。」と仰いました。(気を遣わせてしまいました、、)
【4】今だから思う。若さゆえのストレートさ、今はちょっとマシになった。
当時は思った事は、全て口に出してました。オブラートに包んだ事なんて、ない。
「正しいことを言ってる」と思ってた。
でも、今ならもう少し言い方があったなと反省。今は考えてから喋ってるつもり。
少しは大人になったのか?でもまだ伝え方がキツイ時あるみたいです。(気を付けないと!)
その仕入れの帰りは、良いものが仕入れられて良かったねーいやーうちの店とマッチする商品があって良かった、とオーナーと話しながら帰宅。
大量の段ボールを開けて、検品と値付け。良いやん~私これ欲しいーと言いながら、スタッフがマネキンに着せる。マネキン買いしたくなるコーディネート。
そう、上下セットでよく売れた。
土日で沢山売れてしまったので、またリピートで注文をする事になった。
【5】学んだこと:仕入れルートは“分散”せよ
この一件で、仕入れ先を一箇所に頼っちゃダメ。売れ筋商品を1社に頼るのは危険だということを学びました。
災害や倒産でルートが途絶えることは、どの業界でも起こり得ます。
複数の取引先を持っておくこと=リスクヘッジ。
これはどんな商売にも通じるマーケティングの基本ですな。
【6】おわりに:あの経験が、今につながっている
仕入れルートも、人間関係も、一本だけに頼るのは危うい。
依存先は一つだけではなく、幾つかの繋がりがあった方が安心。
この学びは、仕事でも、日常でも、きっとどこかで役に立つはず。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。